バンクーバー2010冬季オリンピック・パラリンピック競技大会のシンボルを初めて目にしたとき、国際的なメンバーからなる選定委員会が選んだにもかかわらず、「イヌイット風のデザインを採用したのはなぜ?」と不思議な感覚を覚えました。そもそも、この石積みのモチーフとなったのは、北極圏の先住民が創り出した遺産「イヌクシュク」で、バンクーバーがあるブリティッシュ・コロンビア州の西海岸あたりから見れば、縁もゆかりもないはるか遠く離れた地のシンボルなのですから。
『Inuksuit—Silent Messengers of the Arctic and Tukiliit(イヌクシュク―北極の無言のメッセンジャーと石像)』などの著書があるオンタリオ州在住の作家ノーマン・ホーランディさんは、石をさまざまに組み合わせた構造物であるイヌクシュクは、オリンピックのシンボルとして理想的と言います。その理由を聞いてみました。
ホーランディさんによれば、イヌクシュクにはオリンピックと同じように長い、長い歴史があります。中には古代オリンピックと同時期の3千年前に造られたものもあります。イヌクシュクは頑丈です。北極から吹き付ける風にも耐え抜いてきました(もっとも、ホッキョクグマがいたずらすることはあるようですが…)。イヌクシュクにはいろいろな意味が込められています。道標の役割を果たすものもあれば、食料の貯蔵場所を示すものもあります。崇拝の対象となっているものもあります。イヌクシュクは過去と現在を結びつける存在でもあります。その姿を前にすると、感動と畏敬の念を禁じ得ません。そして多くの人々が一目見ようと各地から訪れます。どこかオリンピックに似ていますね。
実物を見たくなったら、とにかく北へ。イヌクシュクは、いわばイースター島のモアイ像の北極版です。モアイ像と同じように遠く離れた地に存在します。ケベック州 モントリオールから、ヌナブト準州の首都イカルイトまで、ほぼ4時間のフライト。そこからさらに飛行機で現地へ。
•ケープ・ドーセット:ボートでイヌクシュク・ポイントへ。100体を超えるイヌクシュクが、あたかも斜面を行進しながら下りてくるような光景は圧巻です。
•キミルート:昔のカリブー狩りの男たちが、魚の釣れる漁場の目印として、丘の上や川に積み上げました。
•Qikiqtarjuaq(旧称ブロートン島):「世界の氷山の都」を謳うエリアには、1体のイヌクシュクが丘の頂から町を見守っています。
マニトバ州のウィニペグを起点にした観光も可能です。
•ランキン・インレット:歴史が浅く自立像ではありませんが、高さ4メートル超のヌナブト最大のイヌクシュクです。
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